いびきでお悩みのあなたへ -いびきの解消と快眠へのアプローチ- 秋の夜長、その静寂な闇を引き裂く突然の轟音ー。 大きないびきは、はた迷惑なだけでなく、実は、本人の身体にとってかなりな負担となっていることをご存じですか? ●いびきは上気道が狭くなることで起こる 鼻、のどから気管支にいたるまでの空気の通り道を上気道といいます。ふだんの生活では、鼻から吸った空気がこの上気道をスムーズに通り、肺へと流れていきます。 しかし睡眠中は、筋肉の緊張がゆるむので、あおむけの体勢で寝ると、軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)、舌根が重力で落ち込み、上気道をふさぎがちになって空気が通りにくくなります。 すると今度は、鼻からではなく口で呼吸するようになり、吸い込んだ空気がのどの粘膜を擦るようにして通るため、摩擦音が起こります。これがいびきの正体なのです。 ●こんな原因から、いびきがひどくなる 1)鼻、副鼻腔の病気・・・アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがあると、鼻がつまりやすいため、鼻腔の空気抵抗が大きくなっていびきの原因となることがあります。 2)口蓋垂が長い・・・上気道を狭めやすく、また吸気の際に震動源となり、いびきが起こりやすくなります。 3)肥満・・・太ることで、軟口蓋や咽頭の壁に余分な脂肪がつき、気道を狭めることになります。 4)飲酒・・・咽頭や舌の筋肉がリラックスして、あおむけになると舌が落ち込みやすくなり、気道が閉塞することがあります。 5)老化・・・他の身体各部同様、筋肉が弱くなり、軟口蓋や口蓋垂がたるみやすくなって、上気道をふさぎます。 この他、口蓋扁桃や舌根扁桃、アデノイドなどの肥大によっても、気道閉塞が起こりやすくなり、いびきの原因となります。 ●おおいびきをかいているか、自己チェックしてみよう 1)家族などにいびきを指摘されたことがある。 2)睡眠中、苦しくなって目が覚め、汗をビッショリかいている。 3)朝起きると口のなかが渇いている。 4)日中にひどい眠気を感じる。 5)小太りで首が短く、顔が丸い。 6)鼻で呼吸がしにくい。 7)充分寝ているはずなのに、疲れが抜けない。 8)夜中、頻繁に、トイレに起きることがある。 9)赤ら顔である。 以上のような自覚症状が多ければ多いほど、大いびきをかいている可能性が高くなります。 それでもまだ、いびきをかいているうちはよいのですが、場合によっては、一時的に呼吸が止まってしまっているかもしれません。このような状態を何度も繰り返していると、身体に思いもよらない悪影響が及び、さまざまな病気にかかりやすい下地をつくることになるのです。 しかも、慢性的に大いびきをかいている人の約70パーセントが、このような呼吸停止を起こしているというのですから、たかがいびきと片づけることはできません。 ●睡眠時無呼吸症候群が原因で高血圧や糖尿病に!? 「7時間の睡眠のなかで、10秒以上の呼吸停止が30回以上、または1時間の睡眠中に5回以上認められる」症状を、睡眠時無呼吸症候群といいます。 呼吸が止まる、つまり酵素の供給がストップしてしまうと、血液中の二酸化炭素が増えることで、血液が酸性に傾きやすくなります。 こういった状態が反復したり、また長時間続いたりすると、血圧の上昇がもたらされ、その結果、狭心症、心筋梗塞といった虚血性心疾患や、脳卒中などの脳血管障害を起こしやすくなるといわれています。 また、酵素不足や血液の酸性化によって、血糖値を調節するインスリンの分泌量が減り、糖尿病にかかりやすくなる傾向もみられます。 さらには、呼吸停止によって睡眠がたびたび妨げられるため、昼間、激しい眠気におそわれ、集中力の低下、全身倦怠感、イライラや憂うつ感といった症状が現われてきます。 仕事などで車の運転をする場合には、居眠り運転による交通事故を起こす危険性も考えられます。 ●たかがいびきと考えてはダメ!? 寝入りばなや疲れがたまっているときには、誰でもいびきをかきやすいものです。 しかしながら、前述のような自覚症状が多かったり、また、それまで規則的だったものが途切れ、一瞬静かになった後、突然爆発的ないびきをかくといった状態がくりかえされたりしていたら、睡眠時無呼吸症候群を疑う必要があります。 上気道が狭まる原因は、鼻やのどの病気、軟口蓋や口蓋垂の形態異常、中枢神経の病気など、人によってさまざまです。ご自分の状態に応じて、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、神経内科などで受診して、一度詳しく検査してもらうとよいでしょう。 また家庭では、ふだんの生活のなかで、次のような点に気をつけると、いびきの解消に役立ちます。 1)横向きの姿勢で寝るようにする 2)乾燥しすぎないように部屋の湿度を保つ 3)アルコールは控え目にする 4)肥満体の人は減量に努める いびきを解消したり、睡眠時無呼吸症候群を治すことで、以前とは比べものにならないくらい快適な睡眠や日常生活が送れるようになり、また病気にかかる率も低くすることができます。 たかがいびきなどと軽く考えず、身体が発する一種の警告信号であるという認識をもって、早めに対処することが必要です。 |
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