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医師会からのお知らせ

第29回健康と医療作文コンクール

佳作

「見えない病」
藤田 怜也
山梨大学附属中学校1年
「病気」と聞くと何を想像するだろうか。僕には入院した経験がある。入院前の僕は「病気」と聞くとガンなど悪いところが目視出来る病のことを思い浮かべていた。僕が入院したのは小学5年生の時だ。それはケガや病気ではなく心の病でのことだった。後にわかった原因は、学校で軽いイジメを受けていたことにある。そこで僕は心の病について改めて考えることにした。
僕が受けていたイジメは、仲間はずれにされたり、無視されたりというものだった。一部の人達からで、仲の良い友達はいたけれど、それが長期に渡り行われていたため、僕は体調を崩しやすくなった。そして、5年生のとき、ついに腹痛が激しく食事が取れなくなり、かかりつけ医では原因がわからず総合病院を受診し、即入院となった。
入院したものの日を増すにつれて体調が悪化し、先生は一生懸命治療してくれたのだが体調は良くならず、担当の先生は頭をかかえてしまう。夜もなかなか寝つくことが出来ず夜通し看護師さんが寄りそってくれた。あの時の看護師さんには本当に感謝している。原因を探るために胃カメラを飲んだり、考えられる限りの検査を受けたが、原因はつきとめられることはなかった。体調は悪くなる一方で、入院が長引いてしまったので担当の先生が精神科の先生を紹介してくれた。その先生に今までの悩みや不安に思っていたことを話していくうちに、健康上の問題ではなく、イジメが原因なのかもしれないと、ようやく本当の原因が分かってきた。
その先生が僕と一緒にゲームをやってくれたりしながら僕の話を聞いてくれたおかげで僕の悩みや不安は徐々に無くなり、一ヶ月で完治し退院することが出来た。
退院してから徐々に学校に行くようになったが、もうイジメられることも無くなり心の病を克服出来た。
この時に僕は初めて「心の病」というものを知った。病は気からと言うが、心が元気を無くすと身体にも異常をきたすことを身をもって実感したのだ。厄介なのは心の病は目で見ることが出来ないという点だ。目に見えないから他人に分かってもらうことが難しい。それだけではなく、自分でも気付かないこともあるので深刻な問題だ。僕は自分より自分に詳しい母が気付き、学校と連携して問題を解決してくれたので良かったが、そうではなかったら今頃どうなっていたか分からない。入院した一ヶ月間で僕は人々に寄りそうことの大切さ、よく話を聞いて一緒に問題を解決することの大切さを学んだ。辛いこともたくさんあったが色々なことを学べたので今は良い経験になったと考えている。
現在、世の中には5人に1人つまり約2千万人が心の病で悩んでいると言われている。中には僕のように早期に発見できて完治出来る人もいる。しかし誰にも相談出来ず、段々と悪化してしまい、引きこもりになってしまったり、もっと酷くなると自殺してしまう人もいる。
しかし、誰か一人にでも相談する人がいてくれたらそんな事態は避けることが出来るのではないかと考える。
助けを求めるのは勇気がいることだと思う。助けてくれる人はいないと思ってしまうかもしれない。だけど勇気をふりしぼって助けを求めることが出来れば助けてくれる人は僕のようにきっといる。
人は目に見えなかったり、自分と違うことを理解するのはなかなか難しい。しかし、目に見えないからこそ慎重に、自分とは違うからこそ気を配る意識が大切だと思う。
ケガや病気に気をつけることももちろん必要だが、心の健康にも気をつけて「心身共に健康」を心掛けていきたい。