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医師会からのお知らせ

第29回健康と医療作文コンクール

佳作

「産後の感謝」
佐藤 友季子
富士河口湖町
私はつい先日、残念ながら元気な赤ちゃんを出産してあげることが出来なかった母親です。上に2才半になる娘が1人います。もちろんとても可愛く愛しい娘ではありますが反抗期真最中な中での出来事でした。今でも自分の身に起こったことだとは信じられません。
2021年の9月、赤ちゃんを元気に産んであげられるように、1週間ほどの手術をする必要があるため、事前に準備と説明を聞くために病院へ訪れました。いつもと変わらない健診のはずだったのですが、結果、まさかの心拍停止と告げられたことからすべては始まりました。医師からの説明も頭に入ってこず、現実を受け止めることができず、ただただ涙が溢れました。もう少しで安定期に入りそうだったのに。入院してからの娘のこと、夫のことを考え、更に不安になりましたが、悲しみに浸る時間は長くなく刻々と早く赤ちゃんを出してあげられるよう打ち合わせが始まりました。そしてさらに悲しいことに週数も進んでいるので手術ではなく普通分娩確定でした。バースデープランは楽しい想像しかしてこなかった私には悲しいバースデープランがこの世に存在することすら無知でした。入院当日、もういないはずの赤ちゃんがまだお腹にいる。胎動はもともと感じないほどの小ささだけど確かにいる。実は誤診なんじゃないのかなと思いたかったです。看護師さんにもう一度お腹の中の赤ちゃんを診てもらえるようにお願いしたら快く承知してくれました。納得できるのが大事だからと。緊張する内診。もちろん残念ながら動いていないエコー写真が映り、再確認なのにまだ現実を受け止めることができずどうしようもなく涙が溢れました。次の日から始まる促進剤を入れるとどれぐらいの時間で陣痛がくるか、痛みはどの程度なのか等、親身に質問に答えてくれました。思っていたより早めのお産になり、痛いのは変わらずで出血は多かったのですが長丁場にならずに終えることができました。やっと会えた可愛い赤ちゃんは男の子でした。本当に小さくて小さくて。ママの赤ちゃんでありがとう、ママの身体を守ってくれてありがとうと伝えました。夫も顔が見られてよかったと安堵していました。看護師さんが入れ替わりで来てくれては気さくに声かけてくれたのが励みになりました。私もあなたと同じ体験をしたことあるのよ、ときっと思い出したくない悲しい体験を話してくれたのは印象的でした。そんなときイヤイヤ期で大変な時期の長女のお世話に疲れ果てていた私の心に染みました。それだけ元気な証なんだから感謝しないといけないと思わせてくれました。今ある命を大事にしていくことも教えてくれました。今回のことがなければこんな気持ちにはなれなかったと思います。電気はつけたままで構いません。特別許可しますよと、消灯後なのにも関わらず部屋が暗くなることに不安になる私を気にかけてくれたのも有りがたかったです。いつでも赤ちゃんには会えるから言ってねと、声をかけてくれてはいたもののまだ再び会う勇気が持てず尻込みしていました。産後3日後の消灯後、やっぱりまた会ってあげようよと助産師さんに誘ってもらい息子へ会うことになりました。まるで自分の赤ちゃんかのように可愛いね〜お母さんだよ〜抱っこしてもらおっか?と話しかけてくれていました。可愛い赤ちゃんだね、と褒めてくれたのもとても嬉しかったです。そんな助産師さんの配慮にたくさん泣けてきました。私はどれだけの人に感謝をしないといけないのだろうと。バースデープランのこともその日から前向きに考えることができたのも看護師さんや助産師さんのおかげだと思っています。サイズが合うようにと息子の服を作り直して着せてくれたことも本当に嬉しかったです。病院へ入院している人はきっと色々な病気があり不安な思いの中過ごしていると思います。産婦人科はきっと特にデリケートな科だと思います。仕事として業務をこなすだけではなく患者の気持ちに寄り添いたいと心から願う人ではないと務まらないと思いました。気持ちは患者へ伝わると思います。愛を持って接してくれたことに心がほっこりし救われた気がします。悲しさや辛さは一生忘れることはないと思いますが、人のあたたかさに触れ、体感することにより私は前へ前へと進める気がします。電話でしか声が聞けなかった長女に久しぶりに会えたとき「ママ〜!」と走ってきて抱きしめられたのもとても印象的でした。今までさみしい思いをさせてごめんねと思うと涙が溢れました。私ばかりが辛いのではなく支えてくれる人、待っててくれる人のことを考えると一刻も早く回復しなくてはいけないと肝に銘じました。私に関わってくださった、たくさんの方々、本当にありがとうございました。私も恩返しできるような人間になれたらと思います。