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医師会からのお知らせ

第27回健康と医療作文コンクール

優秀賞

「スマイル・シンデレラ」
白戸 梨央奈
山梨学院小学校6年
「双子?可愛いわね!」3歳年下の弟と並んで歩いていると、すれ違う人にいつもそう声を掛けられる。小さい頃はそれがすごく嫌で、「違います、私の方が3つ上です。」と、ちょっと怒った顔で言い返して、せっかく声を掛けてくださった方を困らせてしまうということがよくあった。
産まれた時は3,134gと同じ病院で同じ日に産まれてきた子達の中では一番大きかったのに、1歳6ヶ月児健康診査の時に成長曲線からだいぶ外れていたため、低身長低体重と指摘され、念のため調べて来てくださいと大学病院への紹介状を渡された。
初めての検査の日、身長と体重を測り、採血や手の骨のレントゲンをとった。
次の検査の時、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」と告げられ、この日から定期的な病院通いが始まった。
どうやら、私の血管は看護師さん泣かせの細い血管なようで、毎回、採血の度に「ごめんね、もう一度ね」と何度も注射針が私の血管に入り、検査の度にあちこちが青あざになるので、すごく嫌だった。だけど、終わった後に貼ってくれる注射用保護パッドに、看護師さんが「今日は何にする?」と言って、好きなキャラクターの絵を書いてくれるのと、ご褒美シールをもらえるのが楽しみで、毎回採血を頑張った。
4歳になったある日、内分泌負荷試験と下垂体のMRI検査をするため、入院することになった。成長ホルモンの出方を見るため、点滴をしながら、同時に30分に1回採血をする。空腹時や眠っている時にどのくらいホルモンが分泌されているか、体の中のホルモンのバランスを調べるための検査をした。最初に点滴の針を何度も刺され、やっと入ったところで板のようなもので、動いても針が抜けないようにと、包帯でぐるぐる巻きにされた。検査の時は病室で安静にしていないといけなくて、つまらなかったし、何も食べてはいけないのでお腹が空いてすごく辛かった。それに30分おきに病室へ採血にやってくる看護師さんが怖くてたまらなかった。そんな私に優しく「5つ数える間に終わるからね!一緒にゆっくり数えてね!」と話しかけてくれた看護師さん。あっちの病室、こっちの病室と休む間もなくバタバタと忙しそうだったけれど、常に皆のことを気にかけて動いていてすごいなと思った。
次の日は、下垂体のMRI検査をした。動くと検査が出来ないので、麻酔をした。私はすぐに眠ってしまったらしい。終わって目覚めた時には涙ぐむ母の顔がボーっと見えた。普通ならとっくに目覚めている時間なのに、数時間経っても全く目覚めない私を心配して付きそいの母は涙ぐんでいた。
あれから7年。成長ホルモンも少しずつ出て、私なりに大きくなっているけれど、低身長は変わらず、定期的に病院へ通って経過観察している。
今までは身体が小さいことを指摘されるのがすごく嫌で、みんなに分からないように泣いたりしたこともあったけれど、今では身体が小さくて良かったと思えることが多くなってきた。からかわれたりした経験があるからこそ人の痛みを人一倍わかるようになったし、思いやりの心を人一倍持てるようになったと思う。
私の夢は医師になることではないが、大変なのにいつも笑顔を絶やさないで接してくださる医療関係の方々を間近にして、少しでも何か役に立てるようなことがあれば、行動したいと思った。
そして、私のスマイル・シンデレラで周りの人達を幸せな気持ちにしてあげたい、そう思った。