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医師会からのお知らせ

第26回健康と医療作文コンクール

佳作

「健康への第一歩」
山岸 凌
駿台甲府小学校6年
ぼくの父は体が大きくて力持ちだ。怒ると怖いが、普段は優しくて健康な体で朝から晩まで仕事をこなす。一日中、立ちっぱなしの時もある。頑張れるパワーの源は、朝からきちんと食べることだ。だからと言って好きな物ばかりを食べるわけではない。肉も魚も野菜もバランスよく食べている。父はぼく達に「しっかり食べて、しっかり寝て、たくさん運動しなさい。」と言う。だからぼくは父のような頑丈な大人になれるよう、最近では苦手な野菜も積極的に食べるようにしている。そうすると、何となく体調が良い気がする。いや、実際に良いのだ。その証拠にずっと風邪をひかないし、体力もついてきた。我ながら体もどっしりとして来たと思う。
そんな父が、4月から単身ふ任になった。ぼくは少し心配だった。「食事は大丈夫かな。寂しくないかな。体調崩したりしないかな。」と。帰れる時は帰ってくるが、「ただいま。」と疲れ切った顔を確認すると、「お帰り。」と同時に「お疲れさま。」と自然と口から出てくる。そのまま家族で食卓を囲む。そして父は相変わらず、よく食べよく飲む。そんな姿を見て、ぼくはやっとホッとする。
6月。ぼくにとっては待望の行事があった。父も単身ふ任から帰ってきて、祖父母も来てくれる小学校最後の運動会だ。ぼくの役割は自分の競技をこなすのはもちろんだが、審判や競技の準備も同時に進める係でもあった。想像以上に忙しく、体は疲れ、正直言って気持ちも参っていた。そしてなんと、本番数日前からお腹を壊した。情けなかった。しかし、気温の高い日が続く中での練習を乗り切るには弱音を吐いている場合ではない。「たくさん食べろ。」という父の言葉を思い出し、元気に取り組むためにも、よく食べよく飲み体力をつけた。そのおかげで頑張れた。とてもやりがいがあった。楽しかった。最高の運動会になった。
ところが、翌週思いもよらぬことが起こった。父が寝込んだのだ。お腹の調子が悪くなり、熱も出て、食事が摂れなくなってしまった。ぼくにとっては想定外の出来事だった。あの父が。頑丈な父が。そんな姿は初めて見た。運動会直前、父は仕事が立て込んでいた。夜中に長時間運転した帰宅し、翌朝は早くから家を出て、運動会のためにテントを設置してくれた。今思えばクタクタだったに違いない。いつ帰ってきたのかも、翌朝いつ家を出たのかも知らなかった。会場で久しぶりに会ったくらいだったから。でも疲れているそぶりを一つも見せず、ぼく達の応援をしてくれ、相変わらず「たくさん食べろ」とお弁当をすすめてくれていた。
父は病院へ行き、水分やおかゆやゼリーなど積極的に摂り、しっかり寝て、回復に向けての自己管理をおこたらなかったため、数日でいつもの父に戻った。そして、さらに次の週にはバーベキューに行き、あの時の辛さを振り返り、自己分析し、美味しく食べられることに感謝していた。
どんな人でも疲れる。その疲れを吹き飛ばせるよう、日々のバランスの良い食事や充分な睡眠、適度な運動が必要なのだ。しかし、病気はそれを超えてくる時があり、人はその病気を乗り越えられないことだってあるだろう。そんな時、どう向き合うか。
まずは、自分の体についてよく知る事が大事な一歩だとぼくは思った。今回、ちっぽけだったけど、自分の体調不良をぼくは乗り越えた。自覚症状や変化に気付くのは自分、自己管理をするのも自分、後に振り返るのも自分。もちろん、家族のサポートあってこそのことだが、自分の内部の小さな変化に気付けるのは自分だけなのだ。しかし、変化を受け入れ、それに対応していくことが簡単なようで難しいとぼくは思う。なぜなら、ぼく達は毎日の生活を継続していかなければならないからだ。つまり、学校を休んだり仕事を休んだりすることで人に迷惑をかけてはいけない、病気の自分はいつもの自分ではない・・・と心のどこかで言い聞かせて、ついつい頑張ってしまう。でも、それではいけない。「休む勇気」が必要な時だってあるのだ。その先に家族や医療のサポートが待っていてくれるのだから。
父は医者だ。自分の体調管理をしつつも、日々患者さんのために力を尽くしている。だからこそ、自分の体調の変化に敏感で、万が一、体調を崩してしまったら、回復に向けて徹底的に立ち向かう。ぼくも父のようなたくましい人になりたいと、今回のことを通して強く思った。そして、ぼくにとってはまだ未知の世界だが、医療を学び、その医療を通して、たくさんの人が日常生活を継続していけるための役に立ちたいと思う。